18年に本格化した米中貿易摩擦は3年目に入ろうとしている。13日に米中両政府は、貿易協議の第1段階の合意を発表した。15日に予定していた米国の制裁関税と中国の報復関税の発動は見送られた。更に米国は発動済みの追加関税の一部を引き下げる。両国の歩み寄りが今後も続くのか。来年もその行方には注視する必要がある。
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■第4弾まで発動
米国は18年夏から制裁関税を課し始め、現在のところ第4弾まで発動、中国からの輸入品3700億ドル分に追加関税15~25%をかけている。第4弾のうち社会生活に影響の大きいスマートフォン、子供服、玩具など1600億ドル分は15日に発動を予定していたが、今回の合意により延期された。
繊維については、昨年秋に米国が実施した第3弾の制裁関税で50~60類の素材が対象に入った。その影響は19年に入り顕著となっている。全ての品目が2ケタ減となっており、羊毛はほぼ半減した。
9月に実施された衣類や靴類は累計でみると影響は分からないが、10月の単月でみると61類のニットが16.5%減、62類の布帛が17.1%減、64類の履物が9.9%減となっている。今回の合意では、第4弾で対象となっている品目の追加関税を15%から7.5%に引き下げるとなっている。ただ、合意には中国の合意履行を担保するため違反時に関税を引き上げる措置が含まれている。
■9項目で合意
中国政府によれば、第1段階の合意は農産品、知的財産権の保護、技術移転強要の問題、貿易拡大など9項目が盛り込まれている。知的財産権の保護、技術移転強要の問題では、今年の3月に技術輸出入管理条例の改正を発表、即日実施された。改正は、米中貿易摩擦の影響と米通商代表部(USTR)の指摘を中国が受け入れたためと言われている。
改正内容は第三者の権利を侵害した場合の責任義務を削除し、当事者が契約で決めれるようになった。改良技術が改良者に帰属するという規定や、不当な制限条項も削除された。こうした強行規定は外資と中国企業間の技術提携で大きな障壁となっていた。ただ、契約法や対外貿易法などの法律で類似する司法解釈もあるため注意する必要があると指摘する専門家もいる。
12月に入り、アジア開発銀行(ADB)が中国の19年のGDP(国内総生産)伸び率予想を6.2%から6.1%に、20年を6.0%から5.8%に下方修正した。貿易統計の速報値では11月の対米輸出が元ベースで前年同月比21.0%減、ドルベースで同23.0%減と大幅な落ち込みを記録した。輸出総額も減速傾向にあり、成長の柱の一つである輸出の伸び悩みが中国経済の成長に影響を与えそうだ。政府は内需へのシフトを進めているが、国内の自動車販売が2年連続で前年割れとなるなど不透明感が漂っている。米中貿易摩擦の長期化は、定量的、定性的の両面で影響が続きそうだ。
(繊研新聞本紙19年12月24日付)