日本、中国、韓国と豪州、ニュージーランド、ASEAN(東南アジア諸国連合)の15カ国が11月15日、自由貿易圏構想「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」に合意、署名した。インドは加わらなかったが、世界のGDP(国内総生産)、貿易総額、人口の約3割、日本の貿易総額の約5割を占める地域の連携協定で、地域の貿易・投資の促進とサプライチェーンの効率化に向けて、物品・サービス貿易や原産地規則、知的財産、電子商取引など20分野に関するルールを整備した。これにより、繊維・繊維製品のほとんどの関税が撤廃され、域内での日本製品の輸出促進が期待される一方、輸入も増加し、国内市場での競争激化も予想される。
(有井学)
【関連記事】《FB用語解説》RCEP 東アジア16カ国の広域自由貿易圏協定
RCEP全体としての関税撤廃率(品目数ベース)は日本側が98.6%で、日本から見た相手国側が91.5%。繊維・繊維製品の関税措置については、相手国・地域、品目によって異なる。
輸出では中国向けで、再生繊維または半合成繊維の長繊維の糸(アセテート、レーヨンなど)と被履したゴムひも、綿の縫い糸の関税(現行のベースレートは5%)が発効後即時撤廃され、デニム(10%)は11年目、不織布(同)は11年目または16年目に撤廃される。
韓国向けは亜麻織物(2%)、綿織物(10%)の大半、人造繊維の縫い糸(8%)を即時または10年目に撤廃。ラオス向けで、綿織物(10%)が即時、または13年目、15年目に撤廃される。
一方、中国からの輸入にかかる関税は衣類が一部で11年目、大半が16年目、衣類以外の繊維製品、糸、織物は即時、または11年目などに撤廃される。韓国からは衣類のほとんどが16年目、衣類以外の繊維製品、糸、織物のほとんどが即時撤廃。ASEAN、豪州、ニュージーランドからは衣類のほとんどで即時、一部で16年目などに、衣類以外の繊維製品、糸、織物で大半が即時撤廃される。
このほか、皮革・履物の輸入関税は対ASEAN、豪州、ニュージーランドで大半が16年目に、対中国で16年目、21年目に撤廃されるが、除外品目もある。韓国からの関税撤廃は除外される。
日本繊維産業連盟の鎌原正直会長は「中国、韓国との初のFTA(自由貿易協定)であり、署名に至ったことは繊維業界にとってたいへん意義深いものと捉えている。早期の発効に向けて各国で速やかに批准を図るとともに、インドの復帰を促すべく、働きかけを行うことを期待する」とコメントした。