楽天ファッション・ウィーク東京24年春夏は、インターナショナルな要素が一段と濃くなった。日本を拠点に活動しているアジア人デザイナーの参加が目立つ。東京のファッションウィークへの参加で存在感をアピールしようと海外のファッション関連団体による合同ショーも目立つ。
(須田渉美、青木規子、写真=ミツルオカザキ、トゥーは堀内智博、セヴシグは加茂ヒロユキ)
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フィジカル
メンズのセヴシグ(長野剛識)は、レディスの「アンディサイデッド」とのミックスショーを東京キネマ倶楽部で行った。テーマは「イフウィーブレイクダウンザウォールズ」。舞台にはその英文字が並び、周りに芝生を演出したランウェーを設置。フェス会場に見立て、反戦へのメッセージを込めた。
破れたデニムパンツは裾に花柄のクロスステッチ刺繍が施され、頭にはクロシェニットのコサージュ。60年代後半のヒッピーカルチャーを思わせる。「僕自身、スラブ民族にも友人がいるし、同民族で分断された状態や障壁を取り払いたい」と長野。アメカジにスラブの伝統的な衣装のディテールを反映した。レパード柄のシャツやパンツには、AI(人工知能)との対話で生成した画像を取り込み、民族衣装風の花柄プリントを重ねる。グランジなスタイルだが、古臭さを感じさせないリアルな柄が新鮮だ。ライダーズジャケットには赤いセロファンのようなメッシュのアームカバー。オーセンティックなアイテムを、グラフィックやアニメーションの世界に引き付けるように色柄やテクスチャーを置き換えた。
ミツルオカザキ(岡崎満)のショーは、1人のモデルがなんとなく現れ、うたた寝をするシチュエーションで始まった。ベーシックな日常着に錯覚を感じさせるクリエイションを取り入れた。デニムパンツやテーラードのセットアップはスラッシュ状に切り裂いて金具でつなぐデザイン。ズレそうなのに体にきちんと合っている、そこに岡崎らしい設計の力を感じさせる。特徴のないTシャツもズレたようにレイヤードした作りになって、くすっと笑いを誘う。岡崎がイメージしたのは「夢の中で幽体離脱した感覚」。不思議の国のアリスの柄が入ったニットに鮮やかなシースルーグリーンのトラックパンツ。ふわふわとしたリアリティーが面白い。