楽天ファッション・ウィーク東京24年春夏は、コロナ禍で見送っていた公式会場の小ホールの使用を再開したため、コレクション規模の小さいブランドの参加が相次いでいる。ショーを通じて、リアリティーや濃度の高さをいかに感じてもらえるか、それぞれの見せ方や演出に力が入る。
(小笠原拓郎、須田渉美、松本寧音、写真=ウィルソンカキ、コンダクターは堀内智博、ペイデフェ、シンヤコヅカは加茂ヒロユキ)
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フィジカル
シンヤコヅカ(小塚信哉)は、東京体育館と国立競技場を結ぶ陸橋をランウェーに見立ててショーをした。明るい月夜に照らされたロマンティックな雰囲気、そこにシンヤコヅカらしいクラフト感覚の服が登場する。れんが造りの家と街並みを描いたプリント、手書きのタイポグラフィープリント、素朴なプリントアイテムと頭巾のような帽子がリリカルなムードを描く。
絵画のようなパネルの装飾をトップやボトムに仕立て、ジャケットにはオーバーペイントして刺繍を重ねる。ロマンティックなストーリー性のある装飾に、ゴールドとクラインブルーがアクセントカラーとなる。ラメの光沢のトップやショートパンツ、ロングスリーブニットにレギンス、ミニマルなアイテムの一方で、ワイドパンツやハイウエストのデニムパンツもあって、量感のコントラストが利いている。
フィナーレには、壁に散歩をする人たちのイラストが流れるように描かれていく。月夜に照らされた壁に、素朴なイラストが浮かびあがり、ロマンティックなコレクションは幕を閉じた。
シンヤコヅカの持つ叙情的な服の在り様は、他にはないオリジナルの世界。もっとシーズンごとにアイテムが展開していくとより良いのだが、手作りに近いアイテムをコツコツ作っていくスピード感も含めて、それが小塚のやり方なのであろう。アトリエとショップの間でクラフト感覚の商品で顧客とつながっていくようなビジネス。変化する時代のデザイナービジネスとして、そんな手法も成立するのであれば面白い。
ペイデフェ(朝藤りむ)の会場は、荒川区の旧三河島汚水処分場喞筒場(ポンプじょう)施設。大正3年に運用を開始した歴史を感じさせる建造物と重厚なポンプの設備を背景に、アングラカルチャーのスピリットを感じさせるショーを見せた。テーマは「アンダーウォーターラウンド」(水中)。