国内最大のテキスタイルビジネス商談会、プレミアム・テキスタイル・ジャパン(PTJ)が24日、東京国際フォーラムで始まった。各出展者のブースでは、過去最高の来場者数を記録した前年同期展に続いて活発な商談が行われており、国産素材への関心の高さをうかがわせた。アジア圏を中心に海外バイヤーの姿も目立っている。会期は25日まで。出展者は過去最多の96社・団体。全国の繊維産地から有力テキスタイルメーカーが一堂に集積し、独自の技術に裏付けられた個性的な商品が競演している。注目の素材を紹介する。
■麻絲商会 軽く、柔らかく、上品に
滋賀の麻絲商会は、今回が単独初出展。特殊糸を使ったリネン100%のストレッチや、産地独自の糸染め法、ルポワン染めを使ったカジュアルな麻を揃える。ルポワン染めは繊維を中白状に染める麻専用の染色法で、後加工で色あせた表情が楽しめ、インディゴ染めなどよりも高い堅牢度が特徴。「最近は薄さや軽さ、上品さを求める声が多い」として、麻の60番手糸を高密度に織り込んだ薄地も提案。先染めやストレッチ、後染めなど幅広いバリエーションを揃える。
写真=ルポワン染めによるナチュラルな風合いの糸を、上品な風合いに仕上げる
■ケイテー・テクシーノ 糸加工で機能と意匠性両立
合繊長繊維織物のケイテー・テクシーノは、自社の生地ブランド「カンティアン」で独自の糸加工技術を生かし機能とファッション性を両立した生地を打ち出した。「カバーレ」は、ポリエステル100%ながら綿ライクな風合いで、ストレッチ性や吸水速乾性にも優れる。綿100番手相当と糸を細くすることで目付けが120㌘と軽量化を実現した。同じくポリエステルで梳毛ライクな「ウルトーラ」は、ドライ感やふくらみ感が特徴。取り扱いのしやすさも魅力で、コート地などでの採用を見込む。
写真=ストレッチや撥水性などの機能も持つ「ウルトーラ」
■シャルマン工芸 立体的で華やかな刺繍
シャルマン工芸は透け素材から厚地まで、様々なベース地に施した華やかな刺繍を提案する。ブースでは今回のために新たに企画した200柄を披露。チュールにカラフルな意匠糸で刺繍を施した素材は、春夏らしい軽やかさに加え立体感もあり、ファッションの部分使いのほか、インテリアや雑貨向けにも提案する。国内、北欧など国内外の図案家と提携しており、数万柄以上の図案を持つ。
関西一円に3社の自社工場と7社の協力工場を持ち、小ロット短納期や別注柄対応も可能だ。
写真=意匠糸やカラフルな糸を使った刺繍で付加価値を提案
■日出染業 プリント企画を展開
日出染業は「マーシャルコレクション」プリント企画を展開する。仏人のクロードマーシャルが、世界100カ国から収集したシール(切手)をモチーフにした企画。26万点のシールの中からオリンピックに関連したモチーフの一部、11柄をシャツやバッグなどの資材用に提案する。
プリントと同時に馬油加工やココナッツオイル加工などの風合いをよりソフトにし、保湿性などを持たせた加工や備長炭加工など、自社での加工を併用できる機能でプリント需要を促進する。
写真=マーシャルコレクションプリント
■山陽染工 日本独自の染料使いで
山陽染工は、主力のインディゴ後染めや硫化染めで芯を白く残すダスティー加工のほか、日本特有の天然染料を使った生地シリーズ「ワサンボン」を打ち出した。ダスティー加工はリネン、レーヨン混などきれいめな素材に施し、ビンテージ感のある独特の表情を表現した。ワサンボンは、ベンガラや柿渋、墨を染料に使用。デニムにオーバーダイをして洗いをかけた生地などを披露した。和紙糸との組合せも計画する。また、グループ会社の中国紡織や、他産地との連携による素材開発も進めている。
写真=ベンガラや柿渋など日本ならではの染料で味のある色合いの「ワサンボン」
■山﨑テキスタイル 他産地と協業し新たな風合い
浜松産地の山﨑テキスタイルは、綿の細番強撚糸を使った高密度織物に定評があるテキスタイルメーカー。生機リスク機能を備えるのも特徴。他産地の染色加工場と協業し、綿の領域を広げて販売拡大を目指している。今回は、滋賀県の大長と初めて組み、強撚糸の高密度織物に塩縮加工を施して、これまでにないソフトな風合いを付与した。高品質綿でも強撚糸の高密度織物の開発に注力しており、新たに東洋紡STCの超長綿「マスターシード」を使った織物を打ち出している。
写真=固くなりがちな強撚糸の高密度織物を塩縮加工で柔らかく