「アンファッショナブル」「ファッションはわたしたちに関係ない。」――パタゴニアが4、5月に直営店などで強く打ち出したメッセージは大きな反響を呼んだ。ファッションではなく、なぜクオリティーを重視するのか。ライアン・ゲラートCEO(最高経営責任者)に改めて聞いた。
(杉江潤平)
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排出削減に向き合う
――今回の取り組みを過激な仕掛けと見る向きもある。
クオリティーの意義を伝えるキャンペーンを過激なものとはそもそも思っていません。(創業者の)イヴォン・シュイナードがクライミングの道具を作っていた時代から大事にしてきた当社の理念です。製品に関わるあらゆる要素の軸に据えており、我々のビジネスや企業風土の中心にあるものです。
――GHG(温室効果ガス)の排出削減に向けて取り組んでいることは。
本当の意味でGHG排出を減らすには、今やっている事業全てをただちにやめればいい。それでゼロになります。また、木を植えるなどして排出量と相殺するオフセットというやり方もあります。しかしいずれも本質的な問題解決ではありません。私たちは、自社のサプライチェーン内で生まれるGHGを減らすことに向き合っています。
取引先工場でどれくらいのCO2(二酸化炭素)が排出されているかを把握する段階は既に終わっており、現在は何が原因でCO2が発生しているかを見極める段階に移っています。現在、サプライヤー3社と組み、工学的な観点から調査をしています。さらに外部機関と組み、履歴管理の枠組みをどう構築するか、またそれに基づいて再生可能エネルギーへの転換を効率的に行うための投資を工場とどう実施するかについて調べています。
CO2排出に税を
――「グリーンウォッシング」について。
世界には、今のビジネスのあり方を真剣に変えようとしている企業が増えている一方で、そのふりだけをしている会社もたくさんあります。危険なことはそういう会社が混乱を生み出してしまうことです。それを防ぐには、各国の政府がCO2の排出に巨額な税金をかけることだと思います。そのような法律ができれば、CO2の排出が大きく減るきっかけになると思います。
――他社の社長を務めた経験もあるライアンさんにとって、「企業としてのパタゴニア」のユニークな点はどこにあると思うか。
イヴォン・シュイナードはいつも世の中の流れとは逆を向いています。他が、あるところに行くなら、彼はまったく別の方向に行きます。そしてパタゴニアで働くだいご味は、ビジネスをしながら世の中を良くするための新しいルールを考えられることにあります。
パタゴニアでは、自分たちのやっていることに何より真剣に打ち込みますが、あまり堅苦しく考え過ぎません。つまり、仕事は真面目に取り組むけれど、時に笑うことも大事にしているのです。