【パリ=松井孝予通信員】衣料品リサイクル事業者ル・ルレが、仏各地の大手衣料品店前に不用衣類を山積みにする抗議活動をした。背景には、回収・選別を担う現場への資金不足と、制度設計のゆがみがある。
再資源化を担う同社には現在、1トン当たり156ユーロの補助しか支払われておらず、必要額304ユーロの半分に満たない。支払いを担うのは、消費者が新品購入時に負担するエコ税を運用する業界団体のリファッション。理事には「キアビ」や「デカトロン」などの大手が名を連ねており、「回収を担う現場との利害が一致していない」との声もある。
25年からEU(欧州連合)で導入された生産者拡大責任(REP)制度では、販売事業者が商品の廃棄や再資源化にも責任を負うと定められた。だが、制度が目指す「循環型ファッション」と、現場の疲弊との乖離(かいり)が露呈している。
一方、欧州では繊維廃棄物の再資源化を産業規模で進める「リハブ」構想が進行中で、9月には具体的な行動計画が発表予定だ。収集・選別から素材再生までを域内で完結させる体制を整え、年250万トンの再資源化を目指す。
循環型ファッションという理想のもとで、仕組みをどう機能させるのか。現場の声が、その問いを突きつけている。