パーセル(東京、品田琴恵代表)のジュエリーブランド「パーセルジュエリー」が、百貨店中心に店舗を広げ、顧客を増やしている。メインアイテムは多彩な天然石を使ったリング。期間限定店を開いて全国にファンを根付かせ、現在常設9店を出店、25年5月期には売上高10億円を見込む。店頭やSNSを通じた発信にも力を入れ、ブランドのテーマでもある、「色鮮やかで幅広いジュエリーの楽しさを伝えたい」(品田代表)としている。
(中村維)
多彩な素材
店頭には、色とりどりのカラーストーンにサンゴやパールと様々な素材を使ったジュエリーが並ぶ。いずれも、自社工房で丁寧に仕上げられたものだ。キャンディーのような大粒の色石を小粒の石で取り巻いたポンポネ、色もカットも異なる天然石を連ねたサンクルールなど、四つのアイコン的なコレクションがある。手打ちのミルグレイン、アールデコにインスパイアされたグラフィカルなモチーフといったアンティークのエッセンスを取り入れながらモダンに仕上げている。同一アイテムでも色石の種類や配色が1点ずつ異なるため、何店も回って、じっくりとごほうびジュエリーを探すファンも多い。
パーセルジュエリーは、創業者でありジュエリーのデザインを手掛ける成澤泰介氏が13年に立ち上げた。品田代表は設立メンバーの一人でもある。「当時の市場にはまだ、ジュエリーってこういうものという固定概念のようなものがありました。ギフトやブライダルでプレゼントされる品でサファイヤは青、ガーネットなら赤なんだと。でも、サファイヤにも多様な色があるように、世界に目を向ければ、色々な石があります。もっと自由で楽しいよねと。その面白さを伝えたいとブランドを始めました」(品田代表)。
ブランド立ち上げと同年に東京・恵比寿に路面店を開いた。その後、17年に高島屋新宿店のファッションジュエリー売り場に出店したことを皮切りに、あべのハルカスなどの商業施設や百貨店で店を増やしてきた。客単価10万円前後と、ファッションジュエリー売り場では高単価だが、自家需要で30~40代の女性に支持されている。ファインジュエリーとのブリッジとなる立ち位置でもある。
語れるのが力
新作リリース時には勉強会を開き、その作りやデザインについて共有する。爪の留め方、磨き方一つにも意味がある。「素材からこだわっているから、その熱量を伝えたい。他と何が違うのか言葉で添えないと、買う衝動は起きない。良い商品なのに、語れないから売れないのは良くないですから」と話す。
年に約30回実施する期間限定店の実績も大きく、常設1店舗以上の売り上げがある。地方での期間限定店への来店のきっかけは9割がインスタグラムだ。公式アカウントでは美しいビジュアルをメインにし、物作りのポイントを言葉に起こす。各店ごとにアカウントがあるのも強みだ。スタッフが新作や重ね付けの魅力を伝え、「そのリングの手元は〇〇さんですね」と店頭で声がかかることも。親近感を持ってコミュニケーションできるツールとなっている。
前期は一気に3店が増え、会社としても新しいフェーズに入りつつある。今夏にコーポレートサイトも整えた。商品ラインナップでは、パーセルらしいブライダルのコレクションが出来たらと素材を集め始めた。「よりハイエンド向けのラインナップも生み出せれば」と新たな挑戦にも目を向けている。