小田急SCディベロップメント 「地域経済圏」発想へ転換

2024/06/05 17:30 更新


細谷和一郎社長

 小田急SCディベロップメントは今期(25年3月期)から26年度までの中期経営方針を策定した。小田急グループの経営ビジョンに沿って、事業を従来の駅周辺から地域全体に広げた「地域経済圏発想に転換」(細谷和一郎社長)し、重点施策として、①物件営業力の向上②販促・デジタルマーケティングの強化③地域共生④サステイナビリティー経営--を進める。小田急グループ以外の施設のPM(不動産の運営代行)なども拡大し、「人的投資」にも力を入れる。

(有井学)

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 「地域ナンバーワンの商業施設」をありたい姿とし、地域の客やテナントのほか、社員からも選ばれる会社を目指す。

 物件営業力の向上では、既存施設の改装を積極化する。今期は既に本厚木ミロードで若い世代やファミリーの取り込みを狙ったファッション・生活雑貨の大型改装を4月19日に完了、小田急湘南ゲートで日常生活需要への対応を強化した改装を2~4月に行い、成果を上げている。

 今後はビナウォークに大型アミューズメント施設を7月の予定で導入し、新百合ヶ丘エルミロードの地下1階食物販フロアを7月までに大型改装する。さらに、狛江マルシェを狛江市との連携協定に沿って、駅と市道と一体で6月27日と8月の2期に分けて改装する。

 パークPFI事業(公園に施設を設置して運営する民間事業者を公募で選定する制度)にも初めて参画、6月1日から順次開業する藤沢市立鵠沼海浜公園の商業施設のテナントリーシングを担当、公園の管理を含む運営も行う。同物件を含め、既に2件で実施しているグループ以外の物件のPM受託も増やす。

 小田急グループなどが進める新宿駅西口の再開発に伴い、25年春に新宿ミロードを閉館するが、「これまでのリーシングやテナントリレーションの強み」を生かし、企画構想から開発に参画する。

 販促・デジタルマーケティングでは今年4月時点で登録者が合計約50万人に広がった各施設のLINEと小田急ポイントの会員のID連携と顧客特性に応じた情報発信を今後、本格的に進める。顧客接点を拡大する狙いで、QRコード決済を今期中に全施設に広げる。地域共生施策は各施設で地元行政や近隣の大学など教育機関との連携をさらに強化、「もう一歩浸透させる」。鵠沼海浜公園でも地域連携に取り組む。

 サステイナビリティー経営は資源循環など環境配慮への取り組みを強化するほか、店舗スタッフや社員が持続的に働きやすい環境の整備に力を入れる。営業時間の柔軟化やテナントスタッフ向けの優待制度の拡充などのほか、社員向けの研修や表彰制度など社員の育成と活用も重点。その一環として、他のSCディベロッパーから採用した人材を4月1日付で企画開発部長に登用した。

 23年度の大型施設12施設合計のテナント売上高は1238億5400万円(前期比8.5%増)。19年度比は0.2%減で、改装工事や新宿ミロードの一部区画の営業終了の影響を除くとプラスに転じた。今期は1300億円を計画する。



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