戦前に創業し、日本を代表する企業の一つでもあったレナウンが今年、長い歴史の幕を閉じた。90年代には世界最大のアパレルメーカーとなったが、バブル経済崩壊後はリストラを重ね、近年は中国の山東如意科技集団の傘下で経営再生を目指した。しかし、山東如意の子会社に対する多額の売掛金が回収できなかったことをきっかけに民事再生手続きに入り、小泉グループなどに事業を譲渡。11月に東京地裁から民事再生手続き廃止の決定を受け破産した。
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店舗閉鎖と人員削減
当初はこれを引き金に「国内のアパレル企業、約1万8000社の半分がなくなるのでは」といった見通しも出るほど大きなインパクトを与えた。しかし、信用交換所の調査では20年の負債総額50億円以上の大型倒産は、11月までの段階でレナウン、キャス・キッドソンジャパン、シティーヒルの3件にとどまり、件数も前年より減少している。大型倒産も上半期に集中し「著名企業の経営破綻(はたん)が相次ぎ、倒産増加が懸念されたが、各種のセーフティーネットや融資の利用による資金調達、不渡り猶予措置」(信用交換所)により辛うじて耐えている状況だ。
レナウンに限らず、大幅な構造改革を進めてきた大手アパレル企業も多くが赤字に転落し、さらなる構造改革を迫られた。オンワードグループは前期の700店と同規模の店舗閉鎖を発表。TSIホールディングスも人員削減や子会社解散に加え、グループ企業の再編・統合も打ち出している。事業再生を進めてきた三陽商会も40歳以上を対象としたセカンドキャリア支援制度を打ち出した。
3兆円規模の喪失
特に大きな影響は商業施設などの休業による売り上げの〝蒸発〟だ。繊研新聞社が四半期ごとに行っている「ファッションビジネス景況・消費見通しアンケート」では、20年1~6月期には大半の企業が景況感が「悪くなった」と回答。その後も新型コロナウイルス感染拡大の第2波、第3波が襲い、一時的な回復局面はあったが、年間を通じて厳しい状況が続いている。
売り上げへの影響を11月に実施した調査結果で見ると、10~30%未満の減少が半数、30%以上も17.3%を占めた。繊研新聞社の推定では、19年の国内のアパレル小売り市場の規模は約9兆6500億円。EC強化でも実店舗の減収分は「補いきれない」と見る企業が多く、20~30%の減収となれば、単純計算で2兆~3兆円近い減収規模になる。そのダメージはバブル崩壊やリーマンショック以上だ。
ただし、こうした経営悪化は、暖冬や消費増税、あるいはコロナ禍による消費者の購買行動の変化といった要因だけにとどまらない。近年、世界的にも問題視されている在庫の大量廃棄や、その背景にある過剰生産といった業界全体の構造的な問題が指摘される。これがコロナ禍で一気に表面化したことで、業界全体の構造改革が求められている。
(繊研新聞本紙20年12月25日付)