今年は大手アパレルメーカー間における業務提携が相次いだ。それぞれの得手とする経営資源を共有化することで、業績拡大や新規事業確立に向けた相乗効果を狙ったものだ。他社との長期的な視野を持った共同事業は、物流や工場監査などの非競争分野の事業においても合理化や効率化につながる。
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製販を包括的に
オンワードホールディングスとストライプインターナショナルはファッション分野における包括的な戦略的パートナーシップを9月から本格スタートした。両社がそれぞれ運営するECモールに双方の基幹ブランドを9月5日から相互出店。海外生産における工場監査についても、両社がそれぞれ行っていた縫製工場のCSR(企業の社会的責任)やQC(品質管理)の監査を共同で行い、合理化を図る。
オンワードパーソナルスタイルが販売するオーダーメイドスーツブランド「カシヤマ・ザ・スマートテーラー」のレディススーツでは、ストライプの実店舗とECでの顧客データを基に、客を誘導する。更に「日本版スマートストア・プロジェクト」を立ち上げた。完全予約制で来店予約のある日時のみ運営し、販売スタッフが常駐しない販売形態を採る計画。収益性が確認できれば、出店を加速するため両社によるジョイントベンチャーで新たに会社組織を立ち上げる構えだ。
ワコールホールディングスとデサントは8月、包括的な業務提携の契約を締結した。これにより数百億円規模のシナジーを目指す。内容はアスレジャーに代表されるファッション、スポーツ、健康、美容など「事業領域の垣根を越えた新規事業の創出」。コンプレッションウェア、スポーツインナー、スイムウェアの協業など商品の共同開発・生産販売、チャネルの相互活用。更には、両社の海外拠点活用やECサイトにおける協業、ジュニアカテゴリーでの協業など「両社の保有するアセット(資産)の有効活用」に取り組む。
物流効率化狙う
ワールドとTSIホールディングスは10月から共同配送を本格スタートした。関東1都6県の駅ビル、ファッションビル、大型SCの39館を対象に、同一館に出店する両社の店舗へ同じトラック便を使って納品する。ドライバー不足を要因とする物流会社の運賃値上げが続くなか、アパレル企業側の共同化によって納品物流を効率化する試み。
今後は大阪・名古屋圏などエリア拡大も含め、対象の商業施設を広げていく。店舗間移動の共同化も視野に入れる。
このような業務提携では既存事業で抱える人材や設備、システム、技術などのリソースや事業モデルを相手先との業務提携の際に、いかに適合するように生かすのかがポイントになる。今後の業界の業務提携の動きに注目したい。
(繊研新聞本紙12月26日付)