ニット工連が金融支援の要望書 秋冬物の受注見通し立たず

2020/04/30 06:25 更新


 新型コロナウイルスの感染拡大で、日本のニットメーカーも経営危機に直面している。日本ニット工業組合連合会がこのほど全国の会員組合員に実施したアンケート調査では、秋冬物の売り上げ見通しや運転資金の確保に苦慮している現状が鮮明になった。ニット工連は、5、6月にも悪化が予想される事業者の資金繰りを支えるため、行政に新たな支援策を求める要望書を提出した。

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減産、納品先送り

 アンケート調査は3月末から4月中旬にかけて行い、11産地129社から回答を得た。

 調査結果からは、厳しさを増す事業環境とともに、先行きへの強い懸念が表れた。既に発注された商品について、3月度に取引内容の変更があったかを複数回答で聞いたところ、「特に問題なし」が半数近くを占めた一方で、35社で減産要請、32社で納品日の先送り、30社でキャンセルがあった。

 減産要請では、概算を示した26社の総額が9000万円に上った。最高額は2200万円だった。納品日の先送りは3000万円が最高で、総額(24社)は1億4500万円。キャンセルは総額(19社)8500万円。中には1000万円を失った企業もあった。

 3月の売り上げは、前年同月比で減少した企業が70%に迫った。10~20%減が最多で42社、30~40%減が34社。50%以上減も12社あった。売上代金の回収も不安視されている。3月は、17社が支払い条件の緩和を求められた。うち、8社が分割、9社が延長に応じたという。

 4月度は、85%が売り上げ減を見込む。うち、最も多いのが30~40%減で48社、10~20%減が41社、50%以上減は前月の2倍近い21社となった。アンケートの最後に設けた自由記述では、「大口生産予定のキャンセルがあり、工場は4月から休業に入らざるを得ない状況」「売り上げがほとんどない見込み」といった声も見られた。

 これから量産のピークを迎える20~21年秋冬物は、売り上げ減を見込む企業が89%に拡大。30~40%減と見る企業が54社と最も多く、次いで10~20%減が35社、50%以上減は26社。アパレルメーカーが3~5月に開く予定だった20~21年秋冬展を延期、中止していることが大きい。

 国内ニットメーカーの多くは、展示会受注のアパレルが主力で、「商談が進まない」「見通しが立てられない」という声が目立った。

新規融資にも厳しさ

 中小・小規模事業者で構成されるニット製造業にとって、資金調達も焦眉(しょうび)の課題だ。運転資金の状況は、77社が「数カ月は何とかなるが先行き不安」とした。既に「運転資金が不足し困っている」企業も18社あった。「特に問題なし」は32社だった。資金調達は、予定なしが57社。既に融資を申し込んだ企業では、33社が「売り上げの減少で新規融資の実行が懸念される(貸し渋り)」、6社が「信用保証協会が条件変更で融資してくれない」と回答した。「スムーズに進んでいる」26社の中でも、「返済の負担が増えることが懸念」といった声もあり、不安は拭えない。

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