5月11日までを期限としていた3回目の緊急事態宣言が5月31日まで延長されることに伴い、対象地域のSCや百貨店は対応に苦慮している。国は床面積1000平方メートル以上の大型商業施設に対する4月25日~5月11日までの生活必需品を除く休業要請を緩和し、午後8時までの時短営業を求めているものの、自治体によって要請内容が異なるためだ。SC、百貨店ともに自治体の要請内容に沿って対応するが、営業範囲は同じ自治体内でも施設によって分かれている。
【関連記事】ルミネ都内全9施設 5月12日から衣料品含め、営業店舗を拡大へ 都の要請内容に沿って対応
宣言延長前日の11日正午時点で、延長に伴う営業対応についての消費者向けの告知ができた施設はほとんどなかった。延長決定から実施までの期間が短い上、大型商業施設に対する休業要請を巡り、国と大半の自治体の方針が異なり、施設とテナント・出店者側の調整が難航したためだ。11日正午時点で、会社としての方針を決定できなかったディベロッパーもある。
大型商業施設に対する休業要請は東京都と大阪府は全日、京都府と兵庫県は土日に関して継続(平日は時短営業)し、新たに宣言の対象となった愛知県と福岡県は時短営業を要請している。加えて、東京都と近畿3府県では大型商業施設内でも休業要請業種が異なり、その線引きが曖昧である点が混乱を招く大きな要因となっている。衣料品は東京都では休業要請の対象外だが、近畿3府県では対象だ。東京都では衣料品のほか、靴を含む服飾雑貨も休業要請の対象外だが、アウトドア・スポーツ用品は対象になっており、「ファッション性の高いスポーツシューズはその範囲に含まれるのか」など不明確な点も多い。
東京都のSCでは都の要請内容に沿って衣料品・服飾雑貨を中心に延長前に比べて営業範囲を拡大する施設と、衣料品を含めて全館休業(食品など一部生活必需品を除く)を継続する施設で対応策が分かれる。
ルミネは衣料品・服飾雑貨以外を含め、休業要請の対象外の業種については取引先の意向に沿って営業を順次再開する。一方、SHIBUYA109渋谷(渋谷109)は全館、丸井は一部店舗を除て全館休業を継続する。ただし、渋谷109は「今後の状況を見ながら、可能な店舗は営業再開を検討する」という。三井不動産も生活必需品を除いて休業を継続するが、「営業可能な業種については各施設がテナントと相談しながら、再開するかどうかを決める」という。ディベロッパーによって異なる対応はテナントに大きな混乱を招いている。