繊研新聞社が「ECデータと運営」をテーマにアンケート調査を実施したところ、ファッション企業108社から回答を得た。市場はコロナ禍が終息し店頭回帰の傾向にあるが、ECサイトは、販売だけでなく各種情報を発信・蓄積するプラットフォームとして、SNSは消費者に身近なコミュニケーションツールとして、それぞれ存在感を増している。回答からは、得られたデータをCRM(顧客管理)や在庫調整などに幅広く活用を進めている状況も見て取れた。一方、施策が多岐にわたることで、人材育成・教育への課題感が一層増している状況も浮き彫りとなっている。
デジタルデータの活用方法
CRM、UI改善は継続 在庫調整が順位を上げる
デジタルデータの活用方法は、前年と比較して「在庫調整」の順位が一つ上がったのみ。「CRM」と「サイトのUI(ユーザーインターフェイス)改善」が最も多い活用方法となった。23年は異常気象ともいえる猛暑や暖冬が、消費に大きく影響した一年でもあった。在庫調整は、今後さらに活用が増えてきそうだ。
CRMでのデータ活用は、回答企業の約7割が実施していると答えた。「ECサイトの閲覧履歴や購買データをもとにウェブ広告、サイト改善、マーケティングに活用」「CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)の構築、購買データをもとにメルマガやLINE配信に活用」など、多方面に生かせることが導入企業の多さに表れている。
「オフラインとの会員統合でサービスを一元化」し、ECと店舗の両方でコミュニケーションの精度を高めている企業もある。自分だけの特別感がどこで買っても得られる「ワントゥーワン」もキーワードとして散見された。
サイトのUI改善は、常にアップデートが求められるところ。62社が取り組んでいる。「アクセスの多いコンテンツの拡充とデザイン変更」「サイト内検索サービスの向上」「サイト設計で商品一覧と商品詳細を変更」など、細かい箇所からサイト設計まで、日々改修を重ねていることが見て取れる。
起用するデータはグーグルアナリティクスやNPS(ネットプロモータースコア)、アンケートなど多岐にわたる。いくつかのデータを組み合わせて、サイトの最適化を図っているという企業も多い。
適正在庫を保つために重要な在庫調整は46社。「発注のための需要予測、販売在庫消化予測」「新規投入時などのディストリビューション」「欠品抑制のための補充生産対応」といった在庫管理で抱える課題を改善するシステムが多く導入されている。「ECと店舗の在庫連携」を進めている企業や、先に「ECでテスト販売」をし、発注数を定めているという企業もある。
続いて37社の「企画・生産」では、「EC限定商品の開発・販売」を行っているほか、「レビューデータ、問い合わせデータを一元管理し商品改善」につなげているという回答があった。
4位以降は分散し、取り組み度合いに差がある。「まだ活用していない」企業も1割強見られた。