メイ首相の白シャツでロンコレ開幕(若月美奈)

2016/09/16 17:28 更新


ロンドン・コレクション開幕に先駆け、前夜に首相官邸(あのダウニング街10番地)でオープニングレセプションが開かれた。

首相官邸でのレセプションは恒例で、これまでホストはサマンサ・キャメロン首相夫人。今回は女性首相とあって、テリーザ・メイ首相自身がホスト。そのファッションついていろいろと原稿を書かせていただいたメイさんにお会いできるとあって、いつになくルンルン気分で会場に向かった。

ニューヨークからの移動組がまだロンドンに入っていないため、著名ジャーナリストの姿は数ないが、参加デザイナーはずらりと揃っている。

加えて、セリーヌのフィービー・ファイロやクロエのクレア・ワイト・ケラーなどパリブランドを手がける英国人デザイナーの姿もある。その他は小売関係者や著名プレスエージェントの社長など。

 始まって40分ぐらいしたところで、ナタリー・マセネット英国ファッション協会(BFC)会長とともに、メイ首相が会場に現れた。

パーティーのドレスコートは特になし。と言っても、皆カクテルに相当するぐらいの感じでドレスアップしている。

その中にさりげなく現れたメイ首相はオーバーサイズの白いシャツに黒(もしかしたら紺)のテーパードパンツ。ピンクのリボンテープ飾りがついた華やかなフラットシューズをおめしなっていた。

衣紋を抜いたように着るシャツの襟元にはチャンキーなシルバーチェーンのネックレスをつけ、右腕にも似たデザインのブレスレットをしている。多分、それは「アマンダ・ウエイクリー」のものだと思う(違っていたらすみません)。

さすが、かっこいい! この歳になったら、こんなかっこいいおばさんになりたいと思わせる絶妙なスタイルだった(といっても6歳しか違わないんですけど)。

それよりも、このシャツどこのブランド? 興味はそこに集中する。誰か関係者に聞こうと思った矢先にスピーチがはじまった。まずはマセネットBFC会長。颯爽と壇上で話し始めるこの方も、いつもながら美しい。

続いてメイ首相。マイクに向かったとたん。それまでのほんわりとしたムードとは打って変わり、凛とした気品に満ちた表情で力強く話し始めた。あたり前だが、やっぱり首相のオーラってすごい。

「今までここで開かれるパーティーには知った顔の人ばかりだったのですが、今回はそちらにいらっしゃるキャメロン夫人ぐらいかしら」と場を和らげたと思うと、ファッション産業がいかに英国経済に貢献しているのか、原稿も見ずに様々な数字を出しながら語る。

スピーチが終わった途端に、ヴィヴィアン・ウエストウッドが駆け寄って挨拶をしていた。その後、スティーブン・ジョーンズなど何人かのデザイナーと笑談したかと思うと、さっさとご退場。スピーチの後、5分もその場にいなかったと思う。

さて、シャツのデザイナーを突き止めなければ。早速隣にいた友人の英国人ジャーナリスト、フランチェカに聞いてみた。

「誰かがジョン・ルイスだって言っていたわよ」と、彼女。

ジョン・ルイスは英国を代表する中産階級御用達の百貨店チェーン。ファッッションに関しては、セルフリッジやハロッズと比べると、ぐっとお手頃な商品が揃っている。即座に「えっ、マジ?」と疑って返した。

「そうよねえ」とフランチェスカも不信顔。とにかく真相を突き止めなければ。と、すぐそばにBFCの関係者がいたので聞いてみた。

「パルマー・ハーディングよ。ほら、そこにデザイナーいるわよ」。と、その彼女がさす方向を見るとデザイナーの2人が立っていた。シャツからスタートし、アイテムを広げているこの新進デザイナーデュオ。そう言われれば、すんなり納得する。

 「おめでとう。今日首相が着ること知っていたの?」

「知らなかったからびっくりだよ!」

「これって、秋冬のもの?それとも春夏?」

「ジョン・ルイスとのコラボラインなんだ。もう売り切れちゃって店頭にはないけれど」。

 なるほど。フランチェスカの情報もまんざらガセというわけではなかったのだ。非常にメイ首相らしい納得のいくブランド選び。スピーチでも新進デザイナーの活躍に期待しているといったことをしっかりと言っていたし。

それにしても、30センチの距離まで接近して上から下まで観察した(失礼!)メイ首相は思ったよりも小柄に見え、驚くほど色白だった。

首相官邸でのパーティーは、カメラはもちろん、携帯電話も入り口で預けなければならないので、その様子を写真でお見せできないのが残念。

こちらが、公式写真です。


 左からピーター・ピロット、クリストファー・ドゥ・ヴォス(ピーター・ピロット)、メアリー・カトランズ、テリーザ・メイ首相、ナタリー・マセネットBFC会長、クリストファー・ベイリー(バーバリー)、ソフィア・ウェブスター、ニコラス・カークウッド



あっと気がつけば、ロンドン在住が人生の半分を超してしまった。もっとも、まだ知らなかった昔ながらの英国、突如登場した新しい英国との出会いに、驚きや共感、失望を繰り返す日々は20ウン年前の来英時と変らない。そんな新米気分の発見をランダムに紹介します。繊研新聞ロンドン通信員



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