(第1項)ショップを運営する上で知っておく利益とは?
3.売価・原価・値入・粗利益を理解する⑥
前回の講義は、改めて「粗利益」を考えよう!ということで、主に粗利率の高低がショップに与える影響について考えてみました。今回は「粗利益高」について、改めて深く考えてみます。
了解しました!
まずは、ショップにおける「粗利益高」が持つ役割を、改めてお伝えします。
ショップの営業利益を黒字(粗利益高>販売費及び一般管理費)にするには、粗利益高をできる限り多く獲得することが重要です。ショップを含む小売業を運営する組織において、粗利益高を多く獲得するということは、最重要!と言えるでしょう。
へい。仰る通りでございます!
良い返事をありがとうございますm(__)m。改めて、粗利益高の重要性が確認出来ましたので、これからTさんに例題を出します。宜しければ、Dさんも一緒に考えてみてください。
よろしくお願いいたしますm(__)m
では、例題1です。
(例1)同じ事業部で品揃えが同じで、売上規模がほぼ同じA店とB店がある。本部の指示を理解し、施策を実践したA店は売上が厳しかったが、本部の指示を無視し、独自の施策を行ったB店は売上好調だった。ただし、粗利率に大きな差が出た。以下の図は、A店・B店の損益計算書です。
上記の場合、経営的視点で見てベターなのは、A店ですか?B店ですか?
売上の前年比だけみれば、B店の方が良いので、今までの私の考え方だと、B店の方が良いように思いますが、損益計算書をみると、B店の方が粗利率が低いので粗利高も低くなっています。そのことで、営業利益が赤字になっていますので、ベターなのはA店ですか?
ブラボー!その通りです。
今回の問題は、経営的視点との記載がありますので、当然のことですが、黒字のショップの評価が高くなります。
確かにB店は売上を伸ばしてはいますが、本部の指示を守らず売上を伸ばしたということは、ショップコンセプトを無視して売上を伸ばしています。しかも、粗利益高が前年よりもダウンした上に、損益も赤字になっています。これでは、売上は昨年より良くても、評価するのは難しいですね。
なるほどです。
ということで、次の例題です。
(例2)同じ事業部で品揃えが同じで、売上規模がほぼ同じA店とB店がある。本部の指示を理解し、施策を実践したA店は売上が厳しかったが、本部の指示を無視し、独自の施策を行ったB店は売上好調だった。但し、粗利率に大きな差が出た。以下の図は、A店・B店の損益計算書です。
上記の場合、店長的視点でみてベターなのは、A店ですか?B店ですか?
ベターなのはB店だと思います。
A店は売上の昨年対比は90%であり、売上が2桁下がっています。逆にB店は昨年対比110%と売上を伸ばしてきており、粗利益高も前年に比べ改善し損益も黒字です。なので、B店だと思います!
ブラボー!素晴らしいです。
せんせ、私が更に補足しても良いですか?
Dさん、どうぞ。
今回のようなケースでは、恐らくA店の買上客数はかなり低下しているように思います。ですので、今回のケースは、本部の施策・指示が間違っている可能性が高いと疑った方が良いように思えます。
私も本部にいる期間が長くなり、いつしか仕事の目的が「お客様に喜ばれること!」を目指すことではなく、「本部の指示を現場に守らせること!」に陥りそうなときがあります。ですので、自分たちの指示が本当に合っているのか、私は現場(店頭)に赴いて検証することを心掛けています。本部ではなく現場(店頭)が正解である場合も多いですね。
Dさん、私が伝えようとしたことを全て言ってしまいましたね。本当に素晴らしいです!
本部の側にいる私たちは、常に現場(店頭)の声に耳を傾ける姿勢が大事ですね。
Dさん、感動です…。これからもついていきます!
今回は「粗利益」を更に深く考えてみましたが、最後にまとめます。
粗利益は率・高ともに、ショップ運営においての良い点・悪い点や、気づきを促す指標になります。粗利益率・高がショップに及ぼす影響を理解し、ショップ運営に活かしていきましょう!
へい。了解しました(''◇'')ゞ。
ということで、これで(第1項)ショップを運営する上で知っておく利益とは?が終了です。次回から(第2項)目標設定・管理の重要性に移ります。次回もよろしくお願いいたします。
では、皆さん。次回もお楽しみに(@^^)/~~~
佐藤正臣 95年(株)ノーリーズにアルバイトとして物流倉庫からスタートし、店頭勤務7年(レディース)。02年より(株)ノーリーズにおいてメンズ(フレディ&グロスター・ノーリーズメンズ)立上をMDとして担当。10年よりフリーランスとして活動開始。シャツメーカーの新ブランド開発の企画サポート。その他、新規ブランドの立上マーチャンダイジング計画など、様々なフィールドで活躍したのち、14年5月末、株式会社エムズ商品計画を設立。小売り企業へのMDアドバイスや専門学校での講義・また海外での講義等。現在、多方面で活躍中。www.msmd.jp