ユニセックスの「ミタン」 現代の新しい民族服を

2017/03/17 06:24 更新


 三谷企画室(京都市)のユニセックスウェア「ミタン」が、年齢やテイストを問わず幅広い客層に支持されている。コンセプトは「現代の新しい民族服」。手仕事の深みとコンテンポラリーなたたずまいを併せ持ち、卸売り先の店頭でも独特の存在感を放つ。

 デザイナーの三谷武さんが貫くのは、「金物屋のように変わらず、同じ物を作り続ける」姿勢。それが、疲弊する物作りの現場を少しでも改善できることだとも考えている。

■ずっと着続けて


ラオスで手紡ぎ、手織り、草木染めで仕上げた生地を使ったロングシャツ

 学生の頃はモードにひかれ、モードのシルエットを実現するための生地作りに関心を持った。その後、八王子の機屋でのインターンを経て、京都のテキスタイルメーカーで7年間、生地のデザインや営業、販売を経験。14年春夏物からミタンを立ち上げた。

 現代の民族服を目指した背景は、日本人としての自分のアイデンティティーを掘り下げるなかで、モードを追求することに疑問を感じたから。趣味の茶道を通して「日本は、入ってきた文化を自分たちの解釈で新しい文化にしてきた歴史がある」と実感したこともあり、自身がひかれるアジア圏の生地を使用し、様々な要素を組み合わせて服に仕立てる物作りに行き着いた。

 使用する生地は、国内は機械織りが中心で、遠州、尾州、西脇、湖東などの産地と直接やりとりして作るものがほとんど。海外は手織りが中心で、主にインドやラオス、中国で作られたものを使用している。絹の紬糸とオーガニックコットンのガラ紡糸で織り上げ、藍とクルミで2回染めしたロングジャケットや、ラオス北部のルアンナムターで、原種の蚕で紡がれた糸を手織りしたシルクジャケットなどがある。

 中心価格は、コート4万~5万円、羽織り物3万~4万円、シャツ2万円、ボトム2万~3万円。「ずっと着続けてほしい」という思いがあるため、作った商品は定番として続けるものが多い。リペアも商品の時期を問わず受け付けている。

■店の形態問わず


夫婦や親子で購買するケースもあるなど、幅広い客層をつかんでいる

 専門学校生の頃から、ファッションの生産現場における問題に関心があり、「服を作るということはどうしても環境に負荷がかかってしまうが、出来る限りローインパクトでありたい」という思いが強い。

 そのためには、「長く着られる服を、そんなに高くない値段で、一定量メーカーとして市場に供給し続けられれば、生産現場が定期収入を得ることができ、社会に少しでも良い影響を与えることが出来る」と考えている。

 販売先には、物作りの背景や洗濯の方法などを掲載した専用サイトを開設。「うちの服を通して産地のことを知ってもらえたら」と考え、接客時に伝えてもらうように働きかけている。

 現在の取り扱い店舗数は30で、海外はベルギー、台湾、中国で販売。個性を重視する品揃えの服屋から、作家ものや器なども取り扱う店まで幅広い。顧客層も、夫婦や親子で購入する人がいるなど幅広い人たちをひきつけている。

 今後も、「正確にブランドの情報が伝われば、店の形態は問わない」で販路を広げていきたい考えだ。全国各地のギャラリーや飲食店、パン屋、本屋などで期間限定店も開いており、この活動も続けていく。



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