衣服・ライフスタイル製品作り支援のデジタル生産プラットフォームを提供するシタテル(熊本市)は、アパレル関連企業の経営者・役員(108人)を対象に、生成AI(人工知能)の活用実態調査を実施した。
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生成AIは急速に社会へ浸透し、各産業の業務プロセスや働き方に大きな変化をもたらしつつあるが、アパレル業界での生成AIの活用は全体像がまだ明らかになっておらず、導入の進捗(しんちょく)や効果的な活用方法、業界特有の課題についても、実態の把握が十分に進んでいない現状がある。特に感性や創造性が求められる中で、生成AIをどのように業務に取り入れるのか、業界全体が模索している段階だ。
専門人材が不足
調査では、アパレル関連企業に勤務する経営者・役員の3人に1人が「生成AIを業務に導入している」と回答。一方で導入しておらず、検討もしていない企業は約半数あった。生成AIを活用している業務は「デザイン業務」(56%)や「商品企画」(39%)が上位だった。一方で「導入したが活用が不十分」(50%)、「適切に運用するための専門知識を持つ人材が不足」(33%)などの課題も指摘された。
そのほか、現在または過去に利用したことのある生成AIの約7割が「チャットGPT」、22%が「ジェミニ」、14%が「コパイロット」と回答した。導入理由は「生産性向上のため」「既存業務の効率化のため」が半数以上となった。
導入後、約7割が「業務効率・生産性の変化」や「コストパフォーマンスの評価」への効果を実感している。逆に、導入を検討していない理由は「生成AIの導入が必要な業務がない」が7割以上だった。今後の活用について「活用をさらに拡大し、新しい業務に適用したい」と4割以上が回答、「現在の範囲での活用を継続する」が22%だった。
活用促す支援を
アパレル業界における生成AI活用がまだ一部にとどまり、多くの企業が導入を「検討中」あるいは「様子見」の段階にあることが明らかになった。導入している企業が全体の約3割に対し、「導入が必要な業務がない」とする企業が半数近くを占めている点は、他業界と比べても特徴的だ。一方で導入企業の大半が業務効率化や生産性向上といった成果を実感しており、特にデザインや商品企画など、創造性が求められる領域で有効に機能していることも分かった。
他業界では、カスタマーサポートの自動化や社内業務の効率化といった〝定型業務〟への活用が広がる中、アパレル業界では「感性」や「発想力」が求められる業務への導入が先行している点も大きな特徴だ。
導入企業が感じている課題は、運用人材の不足や社内教育体制の不備など多くの企業に共通しており、「導入すればすぐ成果が出る」という状況ではない。今後は「アパレル業界におけるユースケースの可視化・共有や、外部からの活用支援・教育支援を通じた裾野の拡大が、業界全体の活用促進の鍵」となる。