特許庁はAI(人工知能)を活用した発明に関する特許法での新たな規定などを検討している。6月4日に産業構造審議会知的財産分科会第54回特許制度小委員会を開き、特許法上の課題と今後の見直しの方向性などについて議論した。
昨年11月からの討議を踏まえ、①AIの発明該当性②AIを活用した際の発明者の定義③AIを利用して生成した資料や論文などの「引用発明」の適格性について、特許庁として検討の方向性を示した。
AIの発明該当性に関して、現行法では、発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義しており、AIの活用によるものが該当するのかの規定はない。特許庁ではこれまでの委員からの意見などを踏まえ、「自然人(人)がAIを利活用した発明は特許法に規定する発明に該当する」ことで検討する案を示した。
発明者については、現行法では定義の明文規定はないが、「自然人が前提」と理解されている。「AIを利用して生成した発明の発明者の認定を従前のままとすると、AIを積極的に利活用したために、発明者が不在になる状況が生じ、発明を創作したり、特許権を取得するモチベーションが低下する懸念がある」ことなどが課題となっており、まずは「発明者の定義を明文化すべき」とした。その上で、「AIを発明者とすることは混乱も生じることから、認めない」という案を示した。発明者にAIの開発者を含めるかなどは今後議論する。
引用発明の適格性については、「認定するために満たすべき要件や基準の考えを今後、整理する」。その上で、「AIの利用有無の確認は立証が困難であるため、要件や基準に含めない」案を示した。
次回の委員会は夏以降に開き、「本格的な検討」を行う。