【ミラノ=橋口侑佳】20~21年秋冬に向けたファッションテキスタイルで、黒を中心としたダークカラーが欠かせなくなっている。11日閉幕した伊素材見本市のミラノウニカ(MU)20~21年秋冬は、ダークカラーを基調にしたレースやジャカードがいっぱいだ。色のコントラストや誇張された柄の力強さに、素材の透け感や軽さが官能性を加えている。
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意匠素材の迫力が増している。整然を避け、大胆さを意識する傾向は継続しているが、フェミニンなムードを反映するように、色柄や透け感で女っぽくなった印象だ。
黒のほか、ボルドーや紫、バーガンディーがベースになり、からし色やダークオレンジ、ブロンズといった濃密な、くすんだカラーがアクセントに使われた。ダークカラーのトーン・オン・トーンも多い。
きらりと輝くラメ糸やいぶしたような金の糸などで「フラッシュ的な光を取り入れる」(ステファノ・ファッダMUトレンドディレクター)のがポイント。レヴィのエンブロイダリーレースは、チュールに艶やかな人工のエナメルレザーと毛羽のあるモヘヤ糸をからませて、花柄を抽象的に描いた。カバレッリ&Cは、ボルドー色のポリエステルツイルに、小さなスパンコールがついた糸を一定の間隔で打った。スパンコールが織り組織に半分埋もれ、控えめな光沢を放つ。

柄は、モチーフが巨大化している。人気が続いて久しいチェックや千鳥格子、カラーブロックもマクロが大勢。テッシル・ノヴェックスは、モノトーンの千鳥格子柄を大きく、幾何学的にデフォルメした。
無地も前秋冬に続き、織り目のはっきりした生地が圧倒的で、カルゼが活躍している。やや後退しているツイードも、この表現でよく見られた。マトラッセやキルティングも、うろこ状の小さな楕円(だえん)形を規則的に繰り返し、無地のようにこなされた生地が目立った。ジュニア・アルテ・リカーミ・バイ・アデーレ・ジベッティでも、ブロンズ調のラメ糸を全面に打った織物でキルティングを出し、引き合いが多かったという。
ラスティックなムードが影を潜める一方、自然をオマージュしたような不均一な表面があふれた。主にジャカードやプリント、レースで、柄の境界線が不確かに描かれる。マリーニ・インダストリー・グループは、イスラムのモザイクタイルを土の中から発掘したような柄をパネルジャカードで作った。バノーニは、幾何学模様のレースにコーティングし、さびたような光を加えた。退廃的に見えるものまで、手が込んでいるというところにも今シーズンらしさがある。

(写真はマルコ・ベルトリ写す)