11月も残りわずか。来週からはいよいよ師走を迎えるが、今秋のファッション市場はどうだっただろうか。目的買いで立ち上がりから売り上げを伸ばしたブランドもあるというが、なかなか寒くならず実需目的の商品が伸び悩んだとも聞く。
日本がファッション市場として成長してきた背景には、もちろん四季の存在がある。暑さ寒さだけではなく、季節をめでる感性とともに発展してきた。しかし、それが大きく変わりつつある。長い夏と短い冬。まだ、なんとか四季を感じられるものの、寒くならない秋冬に着る服の選択肢は限られる。ファッションビジネスにおいて、気候の変化が大きく売れ行きを左右するのは事実だ。
気候変動に対応した商品開発は必要だろう。しかし、それとは別にもっと大切な根源的な何かがあるようにも思う。その服をどうしても纏(まと)いたいと思わせるもの、人の感性を刺激して心を揺さぶるもの。服の持つそんな側面こそが、実用品としての存在だけではない、ファッションとしての服の在り様を支えているのではないだろうか。
ある専門店バイヤーと話をしたときに、「もうそんなに服はいらない。大切なものを少しだけ買う」と今の時代を説明してくれた。人は「暑い寒い」だけで服を選ぶわけではない。〝心に響くものを少しだけ〟。そんな買い方もまた今の時代なのかもしれない。
