3月期の中間決算発表が一段落した。中間期発表の11月と、期末決算を発表する5月は記者にとっても慌ただしい。特に今年の11月はテキスタイルや縫製機器の展示会と重なり、展示会場での取材の合間にオンラインで決算会見に参加する日もあった。
上場企業が多い素材メーカーを担当するようになったのは15年ほど前のこと。当時はオンラインはなくすべて対面で、大阪では国の重要文化財にもなっている歴史的建築の綿業会館が会場だった。多い日にはほぼ休憩なく会見室をはしごすることもあった。一日が終わればアドレナリンが出た脳をクールダウンしながら、「あの話題はどの会見で出たんだっけ」と混乱した記憶を取り戻していた。
今では信じられないが、会見中の喫煙は双方OK。記者の質問に、紫煙をくゆらせながら「黒に近い赤かな」と独特の言い回しで収益状況を答えるメーカーの繊維担当役員がいた。先輩記者も「え?赤寄りの黒ですか?」と返して微妙なニュアンスを確認するのも対面ならではだった。
この15年で素材メーカーの事業構造は大きく変わり、ほとんどの企業で繊維のウェートが低下した。限られた会見時間の中で、「赤か黒か」と繊維事業の細部を掘り下げる余裕も無くなっているが、半年に一度の健康診断のように思いながら、緊張感を持って臨むのは変わらない。
