オフィスのフリーアドレス化とコロナ下で社内のペーパーレスが進んだ。とはいえ紙の方が使い勝手が良いことも多い。
ペーパーレスの影響を大きく受けるのが製紙業界。しかし世界の紙・板紙の生産量は中長期で拡大すると見られている。印刷用などは減るが、ティッシュペーパーなどの衛生用紙や段ボール用などが伸びる見通しだ。段ボール用はEC販売拡大による個配増加の影響もある。
パルプメーカーの世界大手メッツァ・グループは「パルプをもっと高付加価値化できる」(メッツァスプリングのニクラス・フォン・ウェイマルン最高経営責任者)と新規事業開発に力を入れる。針葉樹由来のセルロース繊維「クウラ」を伊藤忠商事と共同開発し、量産化が視野に入ってきた。食品用容器も開発し来年早々にデモ工場を立ち上げる予定だ。
激しく動く経営環境に合った事業モデルを模索しながらも、「次世代により良い状態で森林を引き継ぐ」という長期視点も重視する。「これまでは木をどう成長させるが大事だったがこれからはそれだけでは足りない」。地球温暖化の影響を危惧し、動物や昆虫が暮らしやすい森にすることが、森を守ることにつながると、生物多様性を切り口にした新プロジェクトを始めている。次の世代に何を残せるか、という視点をしばらく忘れていたと気付く取材だった。