待ち合わせた車が停車し、何もなかったはずのドア表面に突然レバーが浮かび上がる。SF映画さながらの仕様に戸惑いながら座席に乗り込んだ。上海で配車サービスを利用した時の体験だ。電気自動車(EV)の走りは静かで、加速もガソリン車とは別物。運転席の電子パネルや内装のライトなども未来的だ。
9年ぶりの上海。以前なら街を走る自動車で目立つのは、日本や欧米などの外資系か、中国ローカルメーカーの2種類だった。中国メーカーはいかにも時代遅れなデザインで、しかもどこかで見たようなオリジナリティーに欠けるものだった。今回乗車したEVはどうやら中国メーカーらしい。聞いたことがないブランドだけど洗練された印象だ。
1週間の滞在中は現金を使うことも目にすることもなかった。食事、買い物、地下鉄の乗り降りまで全てスマートフォンを使ってキャッシュレスで済む。クレジットカードさえ財布から出す機会はない。
中国はかえる跳び(リープフロッグ)のように一足飛びに社会が変化し、そのスピードもすさまじい。現在はEVメーカーの乱立と競争激化による過剰在庫の問題が指摘されるが、生物の脱皮のように成長の一プロセスと捉えるのが正しいのかもしれない。「日本よりよほどビジネスチャンスがありますよ」――日本人駐在員の言葉が耳に残る。