映画『国宝』が邦画の実写作品として過去最高の記録を塗り替えている。昨年6月から今年2月半ばまでの動員数は1415万人、興行収入は200億円を超えた。リピーターも多く、何十回と見た観客もいるとのことだ。
作品は歌舞伎の女形として歩んだ喜久雄の人生を描いたもの。主演は吉沢亮、歌舞伎の名門の当主に渡辺謙、その御曹司は横浜流星と多彩な出演者が揃う。前評判も高かったがここまでのヒットは珍しい。コスパが叫ばれるなか、上映時間は3時間を超える。何か新しい社会現象が生まれるのではと分析する動きさえ出てきた。
豪華絢爛(ごうかけんらん)な歌舞伎の衣装や舞台も注目された。娯楽が乏しい昔、庶民は華やかな世界に熱狂したことだろう。ふと、こうした衣装を支える人たちのことを考えた。
作中には歌舞伎発祥の地でもある四条南座が何度も登場する。京都はインバウンド人気でにぎわうが、西陣織の生産金額は半世紀で10分の1と危機的な状況だ。大河ドラマや時代劇で使われる衣装を製作する工場や企業が、今もなお京都市内にあることを、どれだけの人が知っているだろうか。伝統産業を守っていくことは、日本が培ってきた歴史や文化を守ることに等しい。彼らがいなければここまでのヒットもなかったかもしれない。そんなことに思いを巡らせるきっかけになればうれしい。
