あるファッション小売りは自社で販売する商品を全量海外で生産している。調達コストは為替に左右される。22年以降、毎年7~8%のペースで円安が進んだので、春夏と秋冬の毎シーズン数%程度ずつ、コスト上昇分を価格に転嫁してきた。
値上げ後も販売量は落ちなかった。日本人の客離れも起きなかったが、それよりコロナ禍が沈静化した23年以降、訪日外国人の来店が増え、免税売り上げの伸びの影響が大きかった。
インフレで所得増加の実感に乏しい日本人は「季節商品の値引きや期間限定セールのタイミングを待って買う」が、欧米のほか台湾、韓国、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアの通貨に対しても円安なので、免税カウンターに並ぶ外国人客は「国を問わず、値段を気にせずたくさん買ってくれる」。
為替レートは26年に入っても150円台が続いている。来秋冬物の値上げは不可避だが、越境ECも始めたその店は「日本人が買い控えたとしても、海外客による買い上げが順調に増えれば、売り上げを減らさずに済みそう」と見る。
25年の実質賃金は4年連続マイナスの一方で、株価と不動産価格は最高値更新が続く。景気はいまひとつ好転の実感がない。服と同じで、価値が低下した円で買うなら、以前より多くの金額を払わないと株も家も手に入らなくなっただけだ。
