東京証券取引所が「投資者の視点を踏まえた資本コストや株価を意識した経営」を上場企業に要請したのが23年の春。あれから2年。繊維・ファッション業界でも株主、株価を意識した施策が目立ってきた。企業の大小を問わずファンドの出資や買い増しも続く。NISA(少額投資非課税制度)の拡充で、個人株主からの厳しい声もSNSなどに書き込まれる。
企業価値を高め、株価を上げるとの目標には、経営者、株主をはじめ様々なステークホルダーに異論はない。議論になるのはその手法と時間軸。もちろん、ファンドの立場から見れば、投資家の大事なお金を運営している以上、短期の収益を期待するのも当然か。
先日あるパーティーで大手合繊トップのインタビューが話題になった。骨子は「投下資本に対する利益だけを追求するなら不採算事業をやめれば良い。ただ、その中には多くの社会貢献事業が含まれている。収益とは別にその事業は大切にしたい」というものだ。
その場の数人が「本当にその通り。企業には収益だけでなく、社会や地域、社員に対する大きな責任がある」と口を揃えた。その後で「ただし」が加わった。「胸を張って株主にそう言える企業が今、業界にどれだけあるのだろうか」。与党圧勝を受け株価は一段と上がった。同時に、株主が企業に注ぐ視線も厳しさを増していく。
