《めてみみ》やなせたかし氏と三越

2025/09/24 06:24 更新NEW!


 三越日本橋本店は、NHKの連続テレビ小説で再び注目を集める漫画家、やなせたかし氏の軌跡をたどる展覧会を開催した。やなせ氏は1947年から6年間、三越宣伝部に在籍し、店内ポスターデザインなどを手掛けていた。

 同展は現在、名古屋三越栄本店で開いている。三越伊勢丹ホールディングスが所蔵する初公開の自筆ポスター・社内報・イラストなどの資料を紹介した。やなせ氏は1950年に包装紙デザインの一新に携わり、「mitsukoshi」の筆記体はやなせ氏の自筆だ。

 オリジナル包装紙である「華ひらく」は鮮やかな花びらが舞うようなモチーフで、希望と美の象徴として現在も使われ続けている。画家・猪熊弦一郎氏がデザインを手掛けたが、アトリエに出向いて依頼をしたのがやなせ氏だった。デザインの原型を受け取る際に「三越の文字は君が描いておいてくれ」と猪熊氏からの一言があったという。

 やなせ氏が三越での仕事の中で特に心躍ったというのが三越劇場のポスター制作で、1枚の絵に物語が込められている。また、社内報に連載されていた4コマ漫画『みつ子さん』も全話公開した。クスッと笑える日常を描いた漫画には、やなせ氏のユーモアのセンスや独自の世界を見て感じることができた。文化芸術を担ってきた百貨店の役割は今も変わらない。



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