先月、岩手・盛岡の老舗百貨店、川徳を取材した。同社はコロナ禍で業績が低迷し、現在は事業再生ファンドの支援を受け経営再建に取り組んでいる。23年からは20年ぶりの大型改装を実施。それが今年3月末に完了したためプロジェクト責任者から包括的な話を聞いた。
一連の改装の締めくくりは、障害者アートのライセンス事業を手掛け盛岡に本社を置くヘラルボニーの旗艦店導入だ。百貨店の顔となる1階正面側に、作品を見せるギャラリーやアパレル・グッズを売るショップ、カフェで構成する220平方メートルの店舗を入れた。都内や海外から客が訪れるほど盛況で、開業初日から3日間の売り上げは約1000万円に上った。
面白いのは店舗開設に必要な施工費やプロモーション費を、川徳とヘラルボニーがクラウドファンディングで募ったこと。当初目標の1000万円は早々に達成し、最終的には2300万円強を調達。支援者には川徳の外商客らが名を連ねていたという。
本来なら高級ブランドが出店することが多い立地に、地元のユニークな企業を入れ、その出店費用をも顧客とシェアする。これまでの常識では考えられない新しい発想に驚くとともに、その意欲的なチャレンジに感銘を受けた。人口減少やECの台頭などで地方百貨店の多くが苦境に置かれる中、その試みは示唆に富む。