大型商業施設の顧客囲い込み策が一段と強まっている。特に百貨店では富裕層の〝おもてなし〟強化が盛ん。その象徴がインバウンド対応だ。利用額の多い人にVIPカードを渡し顧客化に取り組んでいる。免税対応に限らず、買い物アテンドや旅行相談など幅広いサービスで彼らの心をつかむ。
国内向けでは、自宅訪問を主にしてきた外商顧客の店頭アテンドに力が入る。外商係員との関係性だけに依存するのではなく、館・企業でつながりを深める狙い。拠点となるVIPサロンの新設・増設も目立つ。
ポイントアップ企画など、全員対象の〝マス〟販促を主軸にしてきたSCでも、会員の行動履歴を分析するCRM(顧客情報管理)システムの活用が進み始めている。利用額が多いプレミアム会員向けのサービスコンテンツの充実もその一つ。ある都心SCでは年間買い上げ額400万円以上での特別サービスがあると聞いた。
こうした囲い込み策強化の背景の一つには、人口減少社会への強い危機感があるだろう。かねてから指摘されていたが、国立社会保障・人口問題研究所が「日本の地域別将来推計人口(23年推計)」などを発表しており、より現実味が増したのかもしれない。選ばれる商業施設であり続けるために、モノ・コトの充実はもちろん、おもてなしも含めた館の総合力が試されている。