奈良の冬を彩る行事の一つが1月末の若草山の山焼きである。日中から鹿せんべい飛ばしや和楽器の演奏など様々な行事が行われる。日没後の花火に続き、夜空を真っ赤に染めるメインイベントだ。例年多くの観光客を集めるが、年々訪日外国人も増えているようだ。
起源は江戸時代と比較的新しい。頂上に古墳があり夜ごとに幽霊が出る。山を焼くと出ないとの迷信から、人々が勝手に火をつけた。放火禁止の立て札も効果が無く、延焼を恐れた近隣の春日大社、東大寺、興福寺、奈良奉行所が合同で山を焼くようになったとのことだ。
奈良の神社仏閣も歴史の荒波にもまれてきた。時の権力者と争い、寺社間の勢力争いも繰り広げてきた。明治維新直後には仏教排斥運動も起こり、興福寺などの貴重な仏像もまきにされたという。長い時を経て、今は宗教や個々の利害を超えた平和を祈る山焼きに変わった。
奈良は、靴下やグローブ、履物などの地場産業を数多く抱える。伝統工芸、清酒、農産物などの特産品も数多い。なかなか他業界や同業他社など地域の中での協業が進まなかったが、最近ではイベントなどで異業種との連携の話を聞く機会が増えた。地域全体を活性化していくためには、既存の枠を超えた新しい協業が欠かせない。より多くの人をひきつけ、地域のパワーがさらに大きくなるはずだ。