《めてみみ》地図を読む

2024/05/14 06:24 更新


 気付けば、どこへ移動するにもスマートフォンの地図アプリが手放せなくなっている。初めて訪れる海外の町でも、ネットさえつながれば移動に苦労することはない。下調べもせずに飛行機に乗り、スマホに頼って海外出張をしていたある日、ふと我に返り人間としてのサバイバル力が衰えているのではと怖くなった。

 社会人デビューした二十数年前はスマホなどなく、全国主要都市の拡大図や路線図が収容された手帳サイズの地図を先輩記者にもらったのを覚えている。勤め始めた慣れない町で、地図を片手に取材先へのルートを探していたころが懐かしい。

 デジタル化の今時、紙の地図を持ち歩く人はほとんどいないだろう。けれど小学校では変わらず社会科で地図を学習し、コンピューターなどのルート検索に頼らず自力で経路を読むことを教えられるという。

 ただし地図記号は時代とともに変わっている。Yの字の下がLに曲がった形は桑畑と習ったが、今はもうない。養蚕に不可欠な桑畑はシルク産業の衰退とともに姿を消し、13年に地図記号からも削除された。逆に加わったのは風力発電の風車や老人ホームなどで、どちらも時代を反映している。

 日本の農業で耕作放棄地が問題になっているが、これらを綿花畑に活用する動きが広がっている。価値を生む作物として定着すれば、綿花畑が地図記号に加わる日が来るかもしれない。



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