《めてみみ》「誰から買うか」が重要

2023/08/07 06:24 更新


 数年前に取材先の個店オーナーから言われた「〝どこで買うか〟ではなく〝誰から買うか〟がますます重要になる」との指摘がずっと心に響いている。コロナ禍当初、東京の繁華街から人が消えた。大規模な商業施設が休業し、出店していたテナントも大きな打撃を受けた。

 一方、地方の有力な個店は常連客に支えられ、売り上げを維持できた。地方は元々、来店客数が少ない分、一人ひとりの顧客をじっくり接客でき、顔の見える顧客との深い信頼関係が築かれている。オーナーの目利きや接客力はもちろん、人柄にまでほれ込んでいるファンが多いからだろう。

 東京では大手企業の退店が相次いだが、逆風下でも開業する地方の個店が目立った。5~6年前まではEC関連で起業する若い世代は多かったが、リアル店舗の運営に挑戦する人は少なかった。この間、開業した個店で厳しい環境下でも順調なスタートを切れたところに共通するのは、販売現場である店頭を大切にしてきたオーナーの姿だ。

 昨年、起業した某オーナーは、地元の有力セレクトショップで10年以上の店長経験を重ねて独立した。そのため、店長時代からのファンが新しい店に来てくれるという。人気ブランドだけに頼った店舗運営では生き残れない。今後は、これまで以上にリアルな場で売る人の力が求められるだろう。



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