《めてみみ》客数は追わない

2023/08/04 06:24 更新


 「売上高はコロナ禍前水準まで回復してきた」。こう話す百貨店やSCが増えてきた。すでに、コロナ禍前実績を上回った施設や過去最高売上高を更新した都心施設もある。一方で、入店客数がコロナ禍前に回復した話はまだ聞かない。ある都心百貨店は、23年度に入っても入店客数は2割減が続く。

 自粛反動のリベンジ消費の継続、株高の消費マインド、円安によるインバウンド(訪日外国人)需要の拡大。この「三つの追い風」が客数が減っても売り上げを伸ばしている要因だと先の百貨店。富裕層に限らず、使用価値と資産価値のある高額品を志向するとも指摘していた。

 折り込みチラシなどのマス媒体やクーポン施策、駐車場割引サービスを大幅に減らしたものの、22年度は2期連続増収で23年度も伸ばしている地方百貨店もある。過去に重視していた価格訴求型の〝集客販促〟を修正する一方で、扱う商品やイベントの魅力を高める投資の継続が収益に貢献している。

 「セール不振、プロパー好調」。かねてから指摘されてきた傾向は、今も続いている。「欲しい物」は価格に左右されずに購入しているわけだ。無理に客数を追いかけるのではなく、購買意欲を喚起する魅力あるコンテンツの提案に突き進む。以前の客数には戻らないにしても、結果は後からついてくるのではないか。



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