《めてみみ》いざ、海外

2023/08/02 06:24 更新


 岩波新書などから出版されている『幕末遣外使節物語』という本がある。今から160年余り前、開国後の江戸幕府が海外に派遣した四つの使節団の体験談をまとめたものだ。通商条約の締結や和親を目的に、チョンマゲに刀を差したサムライたちが、欧米諸国を歴訪する。

 日本の威信をかけ、意気揚々と旅立つが、文化の違いによる失敗も間々見られる。少々下品な話で恐縮だが、男性用小便器を、ちょうず鉢と間違え、他人の小便で手を洗い続けた人など、笑うに笑えないエピソードが記されている。

 4回の訪問団に共通するのが、食を巡る苦労話。当時は相手国の軍艦に便乗することが多く、数カ月もかかる船中はパンや肉食が中心。環境変化から体調を崩す人が続出し、持参した少量の餅や米粥(かゆ)などで何とか乗り切ったという。

 さて、現在である。多少の制約はあるものの、海外出張も解禁となり、業界でも多くのビジネスマン、ビジネスウーマンが各地に旅立つ。久々の海外、緊張や猛暑で体の調子が崩れてしまう人も少なくないようだ。とはいえ、少子高齢化が鮮明な日本市場だけで、業界が生き残るのは難しい。中小企業でも海外への挑戦が避けられない宿題となってきた。くれぐれも体調や治安に気を付けながら、日本人としての誇りを持って奮闘してもらいたい。



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