キャッシュレス決済しか受け付けない店が増えてきた。先日もコーヒースタンドで現金を出そうとして「対応していません」と言われ、慌てて交通系カードを差し出した。「現金が一番強い」と教えられて育った世代からすると、常識をアップデートしなければいけないようだ。
店頭での現金のやり取りは手間がかかり、支払いや受け取りミスの恐れもある。それにキャッシュレスなら強盗の心配をしなくていい。
日本銀行のホームページによると、「日銀発行の銀行券(お札)は、法貨として無制限に通用する」(日本銀行法第46条第2項)とあり、円の支払いが必要な場面で強制力が働くと解説されていた。つまり本来現金の受け取りは拒否できないはずだが、現実はその先を行っている。
キャッシュレス社会を推進する目的で4月、給与のデジタル払いが解禁された。労働者の合意を前提に「○○ペイ」での給与支払いが可能になったのだ。同じく国税の納付もキャッシュレス対応が始まっている。
かつて通貨の信用は金が保証した。金本位制が廃止された現在は人々が信じる限り、紙切れでも価値あるものとして流通する。私たちは紙切れに一喜一憂し、それが原因でねたみや恨みも生まれる。キャッシュレス社会で紙という実体からさらに遠ざかり、改めて通貨の不思議を考えてしまう。