《めてみみ》手の届く憧れ

2022/07/01 06:24 更新


 憧れ消費は収入の高低に関係なく根強いと思いたい。富裕層の消費はコロナ禍でも衰えず、高額品の売り上げは伸び続けている。日本百貨店協会による5月の全国百貨店売上高概況を見ると「美術・宝飾・貴金属」は16カ月連続のプラス。伸び率は前年同月比97.5%増で、全体売上高57.8%増を大幅に上回った。

 値上げ前の駆け込み購買もあったようだが、行動が制限されず消費先が広がったにもかかわらず伸びている。「ラクジュアリーブランドや時計、宝飾、美術など高額商材は19年度実績も超えた」。行動制限の緩和は中間層の消費も喚起し、商品別売上高は「全品目プラス」で、衣料品も80.6%増だった。物価の上昇が続くなか、5月同様の傾向が中間層・非富裕層で今後も続くかは不透明だ。

 気になる話を百貨店で聞いた。若い消費者は〝リセール価値〟のほとんどないものより、その価値の高いブランドを繰り返し購入しており、ラグジュアリーブランドの好調要因にはこの合理的な中間層の購買も貢献しているという。

 所得が二極化し、低所得者層が増えている。可処分所得の差が消費に与える影響は大きいが、憧れ消費は根源的にあるのだ。おしゃれは憧れ消費の一つのはず。価格も大事だが、憧れるようなファッションの提案の方が今の中間層の心に響くのではないか。



この記事に関連する記事