上海市は5月16日、都市封鎖の解除に向けて段階的実施を発表した。感染を抑えた地区では今週からタクシーや自家用車の通行が認められ、上海発着の列車・飛行機も順次増やし、6月1日から市内生活を全面正常化していくとした。
上海にようやく光が差してきたが、1カ月半以上もの隔離生活を余儀なくされた人たちは「まだ分からない」と慎重だ。聞くと、行政への不信感、今も外出規制が続くやりきれなさ、そして今後陽性になろうものなら住居地域が再び隔離措置となるため、疑心と用心がないまぜのようである。
上海に駐在する日本人とオンラインで語り合うと、「上海在住者の苦難は、あまり正確に伝わっていない」と漏らす。自宅から一歩も出られないのに「物流の進捗(しんちょく)情報をよこして」と指示があり、多忙だったと苦笑する。加えて「自宅の食料が尽きていく飢餓感は、言いようもない恐怖」と振り返った。「ゼロコロナ」を表す「清零」政策が上海在住者にもたらした苦痛は想像以上と言えるだろう。
一方で、4月半ばから同じマンションで全く交流のない中国人が安否を心配し、食料を無料提供してくれるようになり、「親隣」という言葉がキーワードになったという。清零、親隣どちらもカタカナで書くと「チンリン」となるが、後者のチンリンが続くことを望みたい。