コロナ禍で3年ぶりに行動制限や時短営業がなかった大型連休は、行楽地だけでなく、都内の百貨店も多くの人でにぎわった。来店客が増え、通常の営業に戻りつつある様子を目の当たりにする一方で、買い物だけが目的でない百貨店の在り方を改めて考えるきっかけになった。
一つが百貨店への来店自体に価値を見いだしてもらうことだ。松坂屋静岡店は4月27日、25年ぶりに大規模改装した。「目的地となる地域共生型百価店」を目指す第1弾で、全館の売り場面積の約55%にあたる約1万4000平方メートルを刷新した。
目玉は本館7階に新設した都市型水族館「スマートアクアリウム静岡」だ。約1800平方メートルに44基の水槽を設置し、チンアナゴやハリセンボン、クマノミなど約100種類、約2200匹の生物を展示する。館内をテーマごとに六つに分け、飼育員とも交流できる「見つける」、生物の色や模様に注目した「装う」などのエリアを設けた。
三越銀座店は5月3日、新館8階に「アートアクアリウム美術館ギンザ」をオープンした。国内外で累計1000万人を動員した名物展で、水槽に金魚を泳がせ、光・音・香りで演出する。いずれもコト消費、時間消費型に対応し、新たな客層の取り込みを狙う。従来のモノに特化した効率追求一辺倒からの転換は避けられない。