《めてみみ》薄れる切迫感

2021/11/30 06:24 更新


 コロナ禍で百貨店のOMO(オンラインとオフラインの融合)戦略が広がった。品揃え、接客、決済に至る販売行為の全てをオンラインに置き換える試みだ。店舗の補完だけでなく、メタバース(仮想空間上)のVR(仮想現実)コマースなど新規事業への参入が相次ぐ。

 三越伊勢丹のスマートフォン向けアプリ「レヴワールズ」は新宿東口の街の一部や伊勢丹新宿本店を再現した仮想都市に、いつでもアクセスできる。仮想伊勢丹新宿本店には食料品のデパ地下、化粧品、雑貨・アート、婦人服のリ・スタイルなどのショップや屋上庭園を設ける。

 バーチャル空間内では値札をタップすると、商品の詳細が表示されて連携した自社ECサイトから買い物できる。アバターの着せ替え、感情表現の機能やユーザー同士の空間共有、店舗周辺の街歩きも楽しめる。新規事業の一方、コロナ禍で売上原価と販管費の営業費用の削減が一気に進む。

 人件費をはじめ、宣伝費、外部委託費などを大幅に減らした。損益分岐点売上高を下げ、赤字幅を減らして早期に黒字化する。ただ、売り上げが下がっても利益が出せるようになり、当初の危機感や切迫感が薄れてきた。黒字後も継続的に損益分岐点を下げられるかが焦点だ。同様にDX(デジタルトランスフォーメーション)に対する百貨店間の温度差を感じる。



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