東北のある縫製工場に取材に出向いた。東京のOEM(相手先ブランドによる生産)会社が設備などに数千万円を投じた工場だ。注文の全てがこの会社だからだろうが、珍しいケースではないか。
幹部や現場担当者が毎月足しげく通っている。投資先の会社だし、それだけ重視している表れだ。生産効率を高めて増産するのが主な狙いで、工場経営の収支の改善につなげる。
生産効率を上げると言っても手を早く動かすとか、私語禁止とか当然ながらそんな話ではない。新しい機械を購入したのが大きいが、見逃せないのが発注側の責任だ。設備を入れても、手が早くなっても、そもそも注文が安定的でないと、どうしても緩いアイドリングの時間ができて生産量は落ちる。工場の頑張りだけでは生産効率の改善は絵に描いた餅だが、あまり語られない。ここは外注禁止にしているから、なおさら精緻(せいち)な発注が欠かせない。
工場の生産状況をリアルタイムで把握するため、工程ごとに縫製スタッフがスマートフォンのボタンを押し、発注元のOEM会社に知らせる仕組みも始める。状況を見ながら東京サイドは次の発注を準備する。よどみのない注文で稼働率を目いっぱい高めるのがゴールだ。両者に資本関係はないが、やりようによってはこんなことも出来るのだな、と感心して東北の地を後にした。