《めてみみ》本日分は完売

2021/10/29 06:24 更新


 「本日分は完売しました」。そば屋などで早々に営業終了した店に掛けられる看板。無理して作らなくても商売が成り立つのだろう。自ら作り自ら販売する個人経営店だからかと思っていたが、そうでもない。

 チェーン展開の食パン専門店や百貨店の物産展などでも「本日完売」の店を見かけることが増えた。食品はおおむね消費期限が短い。「残さない」ための仕入れ・生産コントロールは最重点のはずだ。食品ロスへの意識の高まりもあるのかもしれない。とはいえ、単品勝負の店ほど需要予測はしやすいはずで、完売は企業経営としての戦略の一つに見える。

 今日の完売は、明日以降の見込み客、未来の客を生み出す。そう考えれば、機会損失ではなく販売機会創出との見方ができる。ファッション商品と比べ、賞味・消費期限が短く、購買は高頻度。商品単価も低い食品だから〝完売戦略〟を実践しやすいかもしれないが、学ぶべき点はあるのではないか。

 〝今日の売り上げ〟のために店頭在庫量や同業他社の動向をにらんで値引き販売する。それを繰り返して正価販売率が下がり、セールの集客力も失ってきたのは、〝明日〟の販売機会損失の一例ではないか。魅力が低下しないような完売商品の品目を少しずつ増やすなど、未来の販売機会を創出する作り方・売り方があるはずだ。



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