百貨店の売り上げは8月から、一段と減少している。新型コロナウイルスの感染急拡大から、19年比で売上高が3割減、入店客数が4割減となった。9月もほぼ同じ基調だ。7月は19年比で1割減まで戻っていただけに、ショックが大きい。
今春の大手百貨店の株主総会で「もう百貨店はダメじゃないか」との質問があった。百貨店のビジネスモデルやポートフォリオの改革は道半ばであり、コロナの大打撃で収益構造の脆弱(ぜいじゃく)性が顕在化した。コロナ禍前の課題の先送りと、コロナ禍による変革のスピードに追い付いていない課題とが表面化した。
百貨店という看板や老舗ののれん、立地の良さだけで、勝手に客が来店し、他店で売れている商品を並べていれば、そこそこ売れた時代は遠い昔の話だ。ECなどの競合やライフスタイルの大きな変化は、生活者と百貨店の距離を埋めるのが難しいと言わざるを得ないほど広がった。
しかし、購買代理人として顧客が欲する潜在的な商品を仕入れて販売する小売業としての機能、衣食住がワンストップで揃う利便性、おもてなしのホスピタリティー、生活文化の発信、地域コミュニティーの拠点など、百貨店が本来持っている魅力は変わらない。むしろコロナ下の生活で、より必要になっている。リアル店舗を磨くことなしに存在意義は見いだせない。