《めてみみ》どこと、どう付き合うか

2021/07/08 06:24 更新


 香港の民主派大衆紙「蘋果(ひんか)日報」(アップル・デイリー)が6月24日付で廃刊した。記事が「香港国家安全維持法」(国安法)に違反したとして、資産が凍結され経営が行き詰まった。

 同紙は、香港の大手アパレルブランド「ジョルダーノ」を創業したジミー・ライ氏が95年に創刊。中国政府を批判するスタンスを貫き、香港の言論の自由の象徴的な存在だった。その口が塞がれた。中国政府は「国安法では不十分」とし、反対が強く実現できなかった「国家安全条例」の制定を目指し、民主派への締め付けをさらに強める。

 2月に国軍によるクーデターが起こったミャンマーでは、市民と国軍との衝突が相次ぐ。ミャンマーでも民間新聞が休刊に追い込まれた。民主化の道を歩み始めていた同国だが、突然軍事国家に逆戻りした。ミャンマーでのアパレル生産を、カンボジアなど周辺国に移す動きが目立つ。生産・物流の遅れなどへの懸念だけでなく、「軍事国家とは取引しない」との判断もある。

 スウェーデンの調査機関による19年調査では、世界で民主的な国や地域は87。それに対し、非民主主義体制は92で、18年ぶりに逆転したという。

 人民が主権を持つ民主主義は決して〝当たり前〟ではない。どの国とどう付き合うのか。人件費の安さや市場の成長性だけで進出や活用を判断してはいけない。



この記事に関連する記事