SPA(製造小売業)とDtoC(メーカー直販)の訳語は似ている。90年代から急速に広がったSPAは当時、「自ら作り、自ら売る」業態として定義された。DtoCもその意味では同じだ。
メーカー発と小売り発で区分されたSPAブランド。作り手と売り手の間で生じた機会ロスや多段階流通のコストの減少により、適時・適品・適量・適価を追求してきた。OEM・ODM(相手先ブランドによる設計・生産)企業の支えもあり、多くのSPAブランドが生まれた。郊外型SCなど商業施設開発の広がりに伴い、売上高や店舗数を伸ばした企業は多い。今でも主流のビジネスモデルと言える。
一方で、〝適時・適品〟の供給が広がるにつれ、商品の同質化も進んだ。52週MDなどMDの精度向上が課題となっていく。志向の多様化が進むなか、「誰に何を」も問われ始めた。消化率の低下改善が進まず、在庫過多が顕在化した。今思えば、マスへの供給を前提とする仕組み、考え方だったのかもしれない。
今、話題のDtoCは、主としてスモールマスが対象だ。なかでも話題のブランドは作り手の意志が明確に思える。購買者が求めているのも「誰が何を」だろう。一定の事業成長を目指すには仕組みも必要だ。ただ、「作りたいものを作る」という作り手の強い意志が、厚い支持の根底にある。