政府は26年をめどに約束手形の利用廃止を企業に求める方針だ。法規制はできないため、約束手形利用廃止と支払いサイトの短縮を目指した5年間の自主行動計画の策定を繊維を含む産業界と金融業界に要請する。
約束手形は明治時代に制度として整備され、振出人が取引先への支払いを猶予し、資金繰りの負担を軽減する手段として浸透してきた。しかし、現金取引などに比べて支払いサイトが長く、多くの取引で利息や割引料を受取人が負担することなどから、下請け中小事業者の資金繰りを圧迫する要因になっている。
政府の方針は大企業と下請け中小事業者間を中心に取引適正化を促進するのが大きな目的だ。紙の手形をなくすことでペーパーレス化と電子化を推進し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる狙いもある。手形の利用廃止を大企業間取引にも求め、金融業界に自主行動計画で「代替となる電子的決済手段の利便性向上」を求めているのはそのためだ。
DXとはデジタル技術を導入・活用するだけでなく、従来型の商習慣を見直し、ビジネスモデルを改革すること。約束手形の廃止はその象徴の一つでもある。ファッションビジネス業界には今回の政府方針を機に、取引適正化の促進とともに、業界全体の競争力を高めるための活発な議論を期待したい。