《めてみみ》ハンマー&ダンス

2020/12/09 06:24 更新


 流行語大賞にはノミネートされなかったが、今年何度も聞いた言葉に「ハンマー&ダンス」がある。新型コロナウイルスによる感染拡大にどう対峙(たいじ)すべきか、トマス・プエヨ氏が提唱した概念だ。

 3月末に論文がネット上に掲載され、30以上の言語に翻訳されて世界中の国で読まれた。「ハンマー」は感染者を徹底的に減らす施策のことで、欧米で実施されたロックダウン(都市封鎖)、日本では緊急事態宣言がこれに当たる。

 ハンマーで実効再生産数(1人の感染者が感染させる人数)が0.5人まで減れば「ダンス」に移行する。ダンスとは、実効再生産数を1弱に抑えつつ、経済活動を再開することで、同時に検査・医療体制の整備、コロナ下に応じた行動変容も進める。

 つまり、長期化を前提に、強力な対策と抑制の効いた緩和の繰り返しで経済活動と医療体制を維持しながら、治療法やワクチン開発を急ぐ考え方だ。ウイルスの短期間での根絶は難しいことを示唆している。

 日本では再び感染者数が拡大し始めた。過去最多を更新する自治体も相次ぎ、「Go To トラベル」の今後の雲行きも怪しい。これで人の往来が減れば、ファッション消費も影響を受けるだろう。ハンマーをよけて上手にステップを踏む。新しいリズムを身に着けることがファッションの商売に求められている。



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