「客単価が向上した」。人気の北海道物産展を実施した複数の百貨店が強調していた。3密を避けるため、期間を延長し、通路幅を拡大、出展者数も減らした。告知の抑制や入場制限もあり、購買客数の減少は確実。減収の予想だったが、想定以上に1人当たりの購買額が増え、健闘したという。
ゆったりと回遊できる環境だったことが、客単価向上の理由との見方だ。例年なら人気商品には長蛇の列ができる。購入するまでに時間がかかり、別の行列に並ぶ気が失せてしまう。混雑が買い回りを抑制していたわけだ。出展者数の減は、各出展者の売り上げ増にもつながった。
1週間程度の短期間で、多くの出展者を集積することが、百貨店の物産催事の基本的な考え方。豊富なメニューで集客数を高めることが売り上げを作る最重要指標であり、客単価向上を重視した施策は聞いた覚えがなかった。コロナ下での経験を踏まえ、物産催事運営の常識が変わっていくかもしれない。
もっとも、百貨店全館で見れば入店客数の減少が続いている。衣料品の購買客数の減少も止まっていない。客数の多い催事や食料品フロアとの買い回りも少ない。「平日は販売スタッフの方が多い」との声も聞く。ファッションフロアの場合は、客単価よりも購買客数を増やす施策が優先事項だろう。