百貨店でNBの撤退が本格化する。オンワード樫山は昨秋に600店舗の閉鎖を発表、レナウンは5月に経営破綻(はたん)した。中小規模のアパレルメーカーでも不採算店・ブランドの撤退が相次ぐ。百貨店は新型コロナウイルス危機による売り上げ、客数の減少に加え、アパレルの構造不況という二重苦に直面している。
「夏のセールが終わる8月末で撤退することを通告された」と、あるNBについて地方百貨店の幹部が話す。すでに交渉の余地がなく、一方的に最後通牒(つうちょう)をつき付けられた形だったという。婦人服、紳士服ともにエスカレーター周りの売り場一等地の複数ブランドが空くことになり、「すぐに代替ブランドを入れることは無理」と頭を抱える。
百貨店にとって、衣料品は収益源であることに変わりない。しかし、百貨店とアパレルメーカーの取引関係は大量生産、大量販売による相互依存の関係からいまだに脱せずにいる。建値消化率は50%を割り込み、必要量以上の物作りを続けて在庫過多に陥る構造が続いている。
負の連鎖を断ち切るには顧客起点のサプライチェーンを再構築する以外にない。マーケティングを徹底し、顧客の顕在・潜在需要を掘り起こし、取引先と情報共有しながら自店の顧客に適した商品を提供することだ。ブランドの入れ替えだけで今の苦境は乗り切れない。