香港が新たな局面に入りそうだ。中国・全国人民代表大会で、国の安全を脅かす行為などを取り締まる「国家安全法」が提案された。言論やデモの自由などを保障する「一国二制度が崩壊し、中国政府による直接的な統治が進む」と、香港では数千人規模のデモが起こり、市民が多数逮捕された。
香港はこの1年、散々だった。昨年6月、「逃亡犯条例」改正案に反対するデモが本格化した。その長期化で経済が落ち込み、新型コロナウイルスが追い打ちをかけた。新規感染者を抑え込み、少しずつ経済が回り始めた矢先、国家安全法の提出でデモが再燃。混乱が続きそうだ。
香港に進出する企業もこの間に様々な痛手を負った。三共生興が「ダックス」で香港に進出したのが91年。約30年事業を続けてきたが、「売り上げが激減する中、高い家賃を払い続けることはできない」と、店を1年で8から3に減らした。ダックスで香港、中国市場を開拓し、4月に社長に就任した井ノ上明氏は「香港は中国の玄関口だった。だが今は上海、北京でどうブランドを訴求するかが重要。香港の役割は終わった」と言い切った。
中国市場を開拓するためのパートナーとの出会いや知名度の向上、金融機能の活用など香港の役割がなくなるわけではない。しかし香港をどう生かすか、曲がり角に来たのは確かだろう。